コラム その9

◆その9

不動産の相続税評価について詳しくない調査官がいる一方で、中には不動産鑑定士の資

格を持った人もいます。

評価に詳しい人はあっさりと調査を終了する場合が多いのですが、そうでない調査官は

鑑定評価書の内容について詳細に聞いてくる場合が多いといえます。

調査官とのやり取りを再現すると次のようになります。

① 傾斜20°前後の市街地山林について、広大地評価よりも鑑定評価書の方が低い場合

調査官: 鑑定評価書ではなく、広大地評価でやるべきではないか。また、鑑定評価

額も地価公示等の宅地見込地から比準した金額よりかなり低いのではない

か。

筆 者: 傾斜がきつく、道路も狭いため、開発に当たっては造成費が多額にかかり、

大型車の進入が難しいため鑑定評価額で売れるかが難しい土地である。実

際、周辺の売買事例は対象地のように傾斜のきつい山林を開発業者が買う

場合、かなり厳しい価格になっている。

 

顛 末: 調査官は上記の説明でも納得せず、私の事務所まで説明を求めに来まし

た。私は取引事例は守秘義務があるため見せられないが、周辺の宅地開発

で不動産業者が購入している価格を提示し、ようやく納得してもらいまし

た。

② 道路側が平坦で一部盛土しており、奥の方が急斜面の崖地となっている場合

調査官: 道路側が平坦であり、盛土部分は地下車庫に使用すれば良く、奥の急斜面

の部分の擁壁はいらないのではないか。

筆 者: 全体の敷地は建売住宅を5棟建てる現場で、奥の方の擁壁は必要である。

市の開発要綱を充たす擁壁の構造はかなり大がかりとなり、鑑定評価書に

示したように多額の造成費がかかるため開発法の価格はかなり低くなる。

顛 末: 調査官は国税局にいる鑑定士と相談して来て筆者の価格で納得してもら

った。

 

相続税の申告書に添付する場合、十分に説得力のある鑑定評価書でなければなりません。

また、税務代理権限のある税理士と不動産鑑定士は常に一緒に立会いをし、現場で調査

官が納得できるように説明する必要がありあます。

現役の調査官はなかなか本音を話してくれませんが、退官して開業税理士をしている旧

調査官から、「税理士のなかでも能力の差があって、申告場の間違いや個別的要因を考慮す

れば、もっと相続税の額が減少するケースが多い」という言葉を聞いたことがあります。

筆者にとっては、ずしりと重く感じる言葉でした。特に土地は個別的要因によって税額が

大きく変動するため、注意を要することを再確認させられました。