遺産相続と相続税納付について(H26.6)

遺産相続と相続税納付について(H26.6

 

Ⅰ 土地の分割、市場性の問題

 

最近いろいろな相続についての相談がある中で、今日は遺産相続と相続税の納付の問題について書いてみます。相続者に集約される点は、「土地があるから相続税の納付が可能である。」と単純に考えている人が多いのに驚かされます。土地の中身を見てみますと、実は、自分の土地に他人の家があったり、道路に面していない宅地であったり、不動産業者のいいなりにアパートを建てたため非常に分割しにくい土地であったりすることが多いのです。

土地を売却して相続税が納付可能であるということは、その土地が、いざ相続が発生した時に処分できる土地なのか、処分できるにしてもいくらで売れるのかを十分認識しておくことが重要です。

以前、私の担当した案件で、相続した物件が市街化調整区域の山林及び田畑なのにもかかわらず3億円位の評価になっていたり、宅地が道路に接道していないために極めて低い価格での売却が余儀なくされ相続税が納付不可能になっていたりする事例は枚挙していとまがない程多いのです。そういった場合、生前対策と相続後の事後の問題とは、分けて考えておく必要があります。

生前対策として、現在の状態で相続税が納付可能なのか十分検討しておく必要があります。税務署は相続税が納付可能であろうが不可能であろうが、財産基本通達に基づいて機械的に処理していくだけです。事前対策として処分できる土地と出来ない土地を明確に区別して専門家に相談して早めに納税資金の確保をしておく必要があります。

相続が発生してしまったら、悠長なことは言っていられません。その場合は、不動産鑑定士に相談すべきであります。その土地はなぜ財産基本通達での価格では売れないのか。では一体売れる値段はいくらなのか。「相続税法22条」によれば、時価でよいはずですから、時価で申告してもよいことになります。売れない原因はその土地に内在する何らかの問題があるはずです。昨今のように不動産市場が急速に冷え込んでいる状態では自分の希望する値段では売れないことが多いのです。

 

Ⅱ 土地・建物が共有名義になっている場合

 

土地・建物が共有名義になっている場合は厄介です。ある財産を共有名義で取得した場合、市場価値は一気に下落するが、財産基本通達にはその場合の減価は一切ありません。それもおかしいとは思いますが、現実の計算方法ではどうにもなりません。相続税申告時、そのような物件に多く出くわしますが、分割するときにどういう風に考えているのか、区分所有取得するのか。分筆線を入れて兄弟、親子であろうが、自分の所有物を明確にしておく必要があります。

 

Ⅲ 相続税が発生しないか、物件が一つまたは二つであるケース

 

この場合は、相続税は発生しませんが、分割若しくは取り分の問題が生じます。譲り合えればよいですが、譲り合えないケースも多いものです。

私の友人の例をお話します。亡き父は税理士、自宅のみが相続財産で、子供は長男、次男、三男の三人の息子がいます。次男が同業の税理士であり、父の生前は後継者として父と一緒に税理士事務所をやっていました。にもかかわらず、相続財産は事務所兼自宅だけであったため、長兄と三男は売却して自分たちにも売却代金を払ってくれるように要求を突きつけてきました。次男は40年間父が業務をやっていた事務所を泣く泣く手放さざるはめになり、売却して売却代金を3等分にしたと言っていました。次男が最後に私に言ったことが忘れられません。「親が決めてくれれば・・・」と。

このように相続税は発生しないが相続人が何人かいる場合、分割はどうするのか、父母が生きているときに遺言書等により分割の仕方を決めておく必要があろうかと思います。