令和4年12月16日に令和5年度の税制改正大綱が決定し、相続税や贈与税に関する内容が変わりました。特に2つの税金は大きな納税額となるため、改正内容を事前に内容を理解しておく必要があります。この記事では税制改正で変わった点について紹介するので、相続や贈与を控えている方はぜひ参考にしてください。
税制改正で変わった点は?
税制改正で変わった点はさまざまありますが、相続と贈与にフォーカスをあてると主に以下の3点が挙げられます。
- 相続時精算課税制度の見直し
- 生前贈与加算の加算期間の延長
- 教育資金信託、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
特に大きく変わったのは「相続税精算課税制度の見直し」です。相続税精算課税制度は利用されるケースが少なかったため、概要も分からない方も多いのではないでしょうか。そのため次の項では相続税精算課税制度の概要と改正された点について紹介します。
相続税精算課税制度の改正点
はじめに相続税精算課税制度の概要と改正点について解説します。
相続税精算課税制度とは
相続税精算課税制度とは、被相続人が生前中に相続人へ贈与できる財産が一定金額まで非課税になる制度のことです。通常、基礎控除額である110万円以上の財産に関しては贈与税が課せられます。しかし相続税精算課税制度では2,500万円までの財産であれば贈与税が課せられることがありません。また非課税額以上の贈与に関しては基礎控除額が適用されないうえ、一律20%の税率を掛けた贈与税を納税しなければいけません。さらに相続時精算課税制度を使った間柄の贈与は、二度と暦年課税制度が使えない状態となります。相続税精算課税制度を利用して財産を贈与した方(贈与者)が亡くなった場合、贈与した財産は被相続人(贈与者)の財産とみなされて相続税が計算されるため、相続税対策としては使用できるケースが少ない制度でした。
相続税対策になる場合は
相続時精算課税制度が相続税対策になるケースは、「贈与する財産の価値が贈与後に上昇した場合」と「家賃収入がある不動産の場合」を贈与した時です。相続時精算課税制度で贈与した財産は、相続税を算出する際、贈与時の評価額で計算します。すなわち、贈与時の評価額より相続時の評価額の方が高ければ相続税の節税になるということです。主な例を挙げると、贈与する土地が区画整理地となり、評価額が高くなるなど、地価上昇した際は節税効果が見込めます。
また「家賃収入のある不動産」も相続時精算課税制度が有効です。家賃収入も貯まれば課税対象額に含まれますが、不動産を贈与しておけば、家賃収入は受贈者の財産となるため相続税の対象にはなりません。とはいえ家賃収入を生活費にしている方や普段から使用する場合はそもそも貯蓄されないため、どなたでも当てはまるケースではないと理解しておきましょう。
改正点は
では相続時精算課税制度はどのような点が改正されたのでしょうか。令和5年度税制改正により「基礎控除」が創設され、年間110万円までの贈与であれば贈与税は課せられなくなりました。相続時精算課税制度を利用して受贈者に財産を贈与した場合、同じ相手に再度制度を使って贈与することができませんでした。しかし税制改正によって相続税精算課税制度を利用して2,500万円の財産を贈与し、なおかつ110万円の財産も贈与できるということになりました。さらに基礎控除額以内の財産であれば相続税の課税対象にもならないようになったため、より自由度の高い贈与ができるようになってます。
生前贈与加算期間が3年から7年に延長された
相続税精算課税制度以外にも生前贈与加算期間が3年から7年に延長されました。以前は被相続人が贈与した財産のうち、3年以内の財産は被相続人の財産とみなされて相続税の課税対象となっておりました。年間110万円以内の基礎控除額以内であっても相続財産となっておりましたが、改正後は7年間に延長されています。
教育資金信託、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置に関しては3年間延長され、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については2年間延長となりました。子や孫などの教育資金は1人につき1,500万円までの贈与が非課税でしたが、令和5年3月31日までの期間内でした。しかし税制改正により令和8年8月31日まで延長されています、同様に結婚・子育て資金贈与の特例の非課税限度額は子や孫1人につき1,000万円まで非課税で贈与できておりましたが、2年間延長され、令和7年3月31日まで適用されます。
まとめ
2023年の税制改正により、相続税と贈与税のポイントが大きく3点変わりました。特に大きい点は相続時精算課税制度の基礎控除額の創設によって利用しやすくなっています。一方で生前贈与加算期間が3年から7年に延長されたことにより、相続税の課税対象額が増えるため、贈与する前は税理士などの専門家に相談してから行いましょう。